勝利の女神様のあしあと

「人生は舞台」、私たちは次の舞台へ。

劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライトを観た感想②

劇場版スタァライトの感想②、前回の続きです。

  い  つ  の  話  だ  よ  。

尚、前回からかなり時間が経ってしまいましたが実はこれ6月中には既に書いていたものです(苦笑)
最後のあの二人のレヴューだけまとまらず、上げていなかったのですが、もう既に円盤も発売されたということで完成していた所だけを上げたいと思います。笑

一応言っておきますが、ネタバレありきで語るので、まだ観てない人はご注意ください。
また前回の感想で述べたことを踏まえて語るので、まだ読んでいない方は感想①から読んでいただくと分かりやすいかと思います。 

前回同様、私は演劇、宗教、芸術等の知識は一切ないので、今から書くことはあくまでも一個人の雑感として捉えて頂けたらと思います。

わかりましたか?

➡わかります。🦒

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⦵決起集会 ~未完成の舞台少女~

前回語りたかったけど字数の都合でカットした、決起集会の話からします。

スタァライトの世界において、演者と同じく大事に描かれている役があります。それが舞台創造科、つまり裏方です。
「舞台は演者だけでは成り立たない、裏方がいて観客がいて、そこで初めて舞台が完成する」ということは舞台版でもTVアニメ版でも触れられてきたテーマです。だからこそスタァライトは我々ファンのことを「舞台創造科」と呼び、舞台を担う役割として扱ってきてくれました。

この決起集会の場面ではB組の舞台創造科(裏方)の生徒にスポットが当てられます。

雨宮さんは脚本担当、眞井さんは演出担当としてTVアニメ版でも度々登場しましたが、まさか劇場版でもこんなに確りと触れられるとは思ってもいませんでした。
雨宮さんが脚本の最後を書けずに思い悩んでいるところは、創作活動をしている人にとっても結構刺さるシーンではないでしょうか。眞井さんが「二人で、約束したでしょう?」って言いだした時は「ここも約束で繋がっとるんかーい!」ってしんどくなりましたけど、「決起集会までに脚本を完成させる」という軽い感じの約束でちょっと安心しました。笑
そしてここのBGMが『約束タワー』のアレンジなのが泣ける。

スタァライトの核になっているテーマの一つには、「未完成だからこそ美しい」ということがあります。
この決起集会のシーンやTVアニメ版でもちょくちょく出てくるミロのヴィーナス像。そして今作では新国立の劇場にチラッとサモトラケのニケ像があるのが確認できます。この2つの像に共通するのは、「不完全であること」です。この2つの像は一部が欠けていながら、価値ある芸術品として有名ですよね。
ニケは私の名前の由来でもあるのでまるで自分が出演したようでちょっと嬉しかったり。

これらの像が学校の中庭と劇場のロビーに置いてあるのはまさに「舞台少女も舞台女優も未完成な存在である」ということを意味しているのでしょう。
決起集会では未完成の台本を配り、「完成させることへの恐怖心」を眞井さんと雨宮さんが語ります。
本当にこの結末でいいのか?前回以上の成果を出せるのか?
終わりに向かうということは勇気がいることです。でも一度結末を迎えたからって終わりじゃない。私たちの人生という舞台は、また次に繋がっていく。完全じゃないからこそ、次はもっとそれ以上の自分に成長するために前に進み続ける。

メインキャスト以外の他のA組の子たちが次々と「私このセリフ、言いたい!」と声を上げるシーン。立ち止まっているメインキャストと対称的に描かれているのがとても印象的ですよね。どちらの方がキラめいているか?と問われれば間違いなく前を向いている彼女たちの方でしょう。うかうかしているとメインキャストの座を奪われてしまうかもしれません。
舞台少女として生きるには、限りなく完成に向かって貪欲に突き進む覚悟が必要なのだということを教えてくれる象徴的なシーンです。

そういえば今作のレヴューでは言葉や表現は違えど「相手を美しいと思った方が上掛けを落とされている」ような気がします。ふたかおだけはハッキリした描写はないですが、この場面で香子が「綺麗…」と呟くのが舞台創造科の建てた塔に対してだということがグッと来ますね。日本舞踊という他の皆とはまた違う世界を選んだ香子ですが、皆で作る舞台の楽しさ、眩しさをこの学園生活で確かに感じていたのではないでしょうか。
だからこそ彼女たちは閉ざされた塔から降りなければなりません。次の、自分の為の舞台に立つために。

塔を立ち上げる時にBGMで流れている『舞台少女心得』アレンジの「私たちは舞台少女」というフレーズの部分が重なるの、本当にずるい。あの場面で泣きそうになります。
その後の野菜キリンのアップが変化していくシーンで別の意味で泣かされますが。(あれ怖くて目を瞑っちゃう)

⦵続・ワイルドスクリーーーンバロック

✦狩りのレヴュー  ~ななと純那

さてここからはレヴューの続きです。
純那とななのレヴューから。

ここでのポイントは、二人の間に明確な温度差があることです。
ななは「あの子(純那)への執着にケリをつける」と自分の中の課題が見えていますが、純那だけは自分の問題に気付いていません。
しかしこの二人には共通点があります。
それは「これからの進路が不明瞭である」という点です。
この二人の課題は、「進むべき進路の"選択"」です。そう、前回の感想①で述べた雨宮メモの「選択」です。
ななは舞台俳優、裏方どちらに行くかをまだ決め切れていません。その上更に先程の"純那への執着"という課題も残っています。しかしそれを問題として自覚しているだけまだマシだと言えるでしょう。

致命的なのは純那です。周りがみんな演劇の道を志している中、彼女だけが「大学進学」という道を提出します。「今はもっと勉強がしたい」と言っていましたが、これは明らかな逃げです。だって彼女は賢く、偉い人になるよう両親から望まれていたにも関わらず、その反対を押し切ってでも演劇の道に進むと決めた人ですからね。
純那の進路面談の前後に華恋との舞台演習のシーンが挟まりますが、華恋の熱の入った演技(ひかりとのことを重ねているため)に周囲の空気がガラリと変わる描写があります。しかしその華恋を見て、その場の誰よりも早く舞台から現実に戻るのが純那なんですね。一緒に舞台に立っているはずの彼女が。

「何故、行ってしまうのだ…」
「…友よ。」
と呟くななの目はきっと純那のことを見つめていたのではないでしょうか。ななはあの時まさに舞台少女として目の前で死にゆく純那に対して、「何故逝ってしまうのだ…友よ。」と呟いたのだと思います。

そしてレヴューの開幕と共に突然始まる大場劇場。
『大場映画株式会社』のロゴが出た時何かちょっと笑っちゃった。

気になるのはここで流れる純那の台詞が皆殺し前の電車のシーンの時と違っていることです。感想①で語ったようにななが第100回聖翔祭後に再演をしていたと仮定するなら、ここでの台詞違いは「過去の再演の中での純那」ということで説明がつきます。この時ななが「また言ってるよ…」という風にやや呆れの混じった真顔で見つめているのも、きっとこういう言い訳をもう何回も聞いているのでしょう。
それにしても『今は今はと言い訳重ね 生き恥晒した醜い果実』は流石に言い過ぎだと思うよ??私ならここでもう泣いちゃうよ??
そしていくら解釈違いだからって自害を迫ろうとすな、大場なな!
あと「がぅ」ってすな。純那ちゃんより先にオタク死んだわ。

ここで最初に歌うのが純那なのは意外でしたね。けど何処か力負けているようなか弱い歌声。偉人の名言を連ねながらななを追い込んでいく純那らしい戦い方ですが、もうそんな見え透いた小手先の技はななには通用しません。このワイルドスクリーンバロック「貪欲に、己の本心を曝け出す」ための舞台なのですから。他人の言葉を借りるだけでは弱いのです。
あっという間に純那を追い詰めて、「主役になれないと分かっていても手を伸ばし続ける純那ちゃんが、愚かで、美しかったよ」と別れの言葉を投げて、自身の小太刀「舞」を押し付けて再び自害を迫るなな。

いや足で寄越すな、刀を。めっ!

あとここ地味に辛辣なこと言ってない?主役になれないのに頑張ってる純那ちゃん、愚かで可愛い~って心の中ではずっと思ってたってこと?なかなかのサイコパスでは??(※違います)
「あーあ、泣いちゃった」ってお前が泣かせたんやろがい!ってなるの好き。絶対自分からは殺さずに自決させようとするところもなならしくて好きです。
尚も偉人の言葉で立ち直ろうとする純那もここに来てようやく気付きます。このレヴューが何の為に開かれたのかを。

「他人の言葉じゃ、ダメ!!」

差し出された刀に割られた自分の翡翠をぶち込んで、「殺してみせろよ 大場ななァ!!」

って叫ぶところ、もう本当に鳥肌が立ちます。この映画で一番好きなシーンかもしれない。
何度剣で弾かれても立ち上がる純那ちゃん。ここら辺、何だかまるでジャンプ漫画を見ているみたいな気持ちになります。
足元のポジションゼロのバミリを踏んだ瞬間に翡翠色のライトを一身に集めるところも、「この舞台の私が!眩しい主役、星見純那だ!!」って斬りかかるところも、めちゃくちゃカッコイイ。今までの純那ちゃんの停滞っぷりを丁寧に見せつけられてからのこの演出は泣く。ここ8話のひかりちゃんの再生産のオマージュっぽい感じしましたが、どうなんでしょうね。

そして真っ二つに割れた星摘みの塔の前のT字路で二人は別々に歩き出します。一見画角的に純那が下手のように見えますが、Tの位置的に見ると泉側が客席になるので実は純那が上手になってるんですよね。
「終わったのかもしれない、私の再演が、いま。」とここでこの台詞を言うということはやっぱりTVアニメ版後にも再演していた説、有り得そうですよね。(第100回聖翔祭前に再演が終わっていたなら、このタイミングでのこの台詞は違和感がある)

噴水の泉に沈むカメラと純那ちゃんとの写真。結局純那はななの刀を返さなかったので、ななは進路を一本に決めたという表れなのかなと思いました。純那が持って行った「舞」の方が舞台役者としてのキラめき、だと思っているのですが(ななは中学時代から脚本家としての才能があり、舞台役者としての才能は後から現れたことから)、ななは裏方の道を行くことを選択したのかな?という考察をしていますが、どうなんでしょうね。(EDでも役者というよりは脚本家みたいな雰囲気だったような気がする。個人の感想です。)

道は別れど、また新しい舞台で会おうという純那ちゃんの言葉は別れが苦手なななにとってはかなりの救いになったと思います。泣き出すななはもう「塔の導き手」という役ではなく、みんなが大好きで、みんなと一緒に作る舞台が大好きな等身大の「みんなのばなな」に戻ったような気がしました。そう言えば劇中で一度も"ばなな"と呼ばれてないんですよね。徹底してみんなの前に立ちはだかる"導き手"としての役を演じていたのかなと思います。

ここで「…泣いちゃった。」と先程言われたななと同じ台詞をめちゃめちゃ慈愛溢れる感じで優しく言う純那ちゃん、好き。
それでも二人は決して振り向かずにそれぞれが選択した道へと歩き出します。二人が将来再会する舞台が楽しみですね。

✦魂のレヴュー ~真矢とクロディーヌ~

このレヴューは、真矢クロのセッ…惚気合いです。

以上。(おい)

…これだけで終わると、「図に乗るな!」と額縁で首を掻っ斬られそうなのでもう少し続けます。

さて皆殺しのレヴューで唯一上掛けを落とされなかった真矢ですが、そんな真矢を見て、「何でアイツだけ…」と疑問を浮かべるクロディーヌ。皆殺しでうるせぇ!ってななにキレられたのもあってしょんぼりディーヌですが(しょんぼりディーヌ?)、決起集会で未完成の台本の「今こそ塔を降りる時」の部分を読んでその理由に自分で気付けるクロディーヌは流石ですね。
一見するとクロディーヌは前進しているのでは?という気がするのですが、実は彼女も停滞しているんですよね。

それを象徴しているのが、皆殺し前のランドリールームでのシーンです。
まひる「フランス行くんだね」と言われたクロディーヌは、「行くっていうか、帰るっていうか…」と答えています。
この言葉の返しには何処か前向きではない、後暗いニュアンスが含まれているような違和感を覚えます。
注目したいのはここで回っている洗濯機が反時計回りになっていることです。
これは「過去に未練があり、停滞している。もしくは逆行している。」という心情を表現しているような気がするのです。
「卒業、だもんね…」と返すまひるも同じくまだ何か心に引っ掛かっているような、未練があるような様子が窺えます。
つまりここで既に彼女達が舞台少女として死んでいることが明確に表現されていた訳です。

更にここでクロディーヌが読んでいる本の表紙に
「Where there is no heart there is not art.」(心が無ければ、芸術とは言えない)
と書いてあるのも、意味深ですね。(伝説のバレリーナ、アンナ・パブロワの名言。クロディーヌの進路面談のシーンではバレエを踊るシーンが流れている)

対する真矢は皆殺しのレヴューにて舞台少女としてはメインメンバーの中で唯一生き残っています。
では彼女の課題は何か?と問われれば、ただ一つ。
「天堂真矢は完璧である」という仮面を剥がすこと。

自分は完全体であるという自信は彼女の強さではありますが、その自信は慢心と表裏一体であるという危うさがあります。自分は完璧だと満足してしまえばそこから先の成長は望めません。そしてその危険性に彼女自身は気付いていない。その完璧に張り付いた仮面を剥がすこと。それがこのレヴューの役割なのでしょう。

ところでアニマル将棋って何なんですか?

というかこの二人のレヴューはもう本当にそのまんまなので余計な考察なんて蛇足感がありますね。笑
ただ恐ろしい程の熱量と映像と音楽を浴びせられてぶん殴られるので脳震盪起こします。

一度真矢にボタンを弾かれ倒れて、寝転がったまま高笑いした後舌ペロするクロちゃんが色っぽすぎるとかお互いの口上をとことんディスり合うとことかいつだって可愛い真矢とか突然誇りと驕りのオマージュ曲が流れて殴り愛をしだすところとか好きな所めちゃくちゃありますが、キリがないので割愛します。笑

真矢クロは燃えながら共に落ちる炎なんだよ。わかります。(何もわからん)

ライバルのレヴューは終わらない、って言葉素敵ですよね。
この二人は元々高め合うライバルって関係性が強かったですが、その関係性がより強固なものになってこの先も、離れたとしてもずっとお互いの存在で成長し続けていくんだろうな、という信頼感がありました。流石真矢クロ…強すぎる。

ところで、EDでのクロちゃんの家にランドリールームにあったヒヨコのオブジェ置いてありましたけど…それは、あの??

  ご結婚おめでとうございます。


…はい、今回はここまで。いかがでしたでしょうか?
因みにこの記事は6月時点から一切編集していないので台詞とか多少記憶違いがあるかもしれませんが、ご了承ください。
最後の華恋とひかりについては、長くなりそうなので③で語ります…笑(オイ)